こんにちは。

先日以下のようなニュースを見ました。

【大都市圏の「生産緑地」に対する税優遇措置を10年延長する国の特別制度について、首都圏13県で多くの生産緑地を抱える自治体では、2022年に優遇措置の期限が切れる面積の8割近くの所有者が延長を申請していることが分かった。】

横浜市の場合、令和3年1月31日が特定生産緑地の申請期限でしたね。

横浜市の場合は、生産緑地の指定日が平成4年11月13日でしたので、特定生産緑地の指定の効力は令和4年11月13日からということになります。

しかし、あれだけ2022年問題騒がれた割には、8割の方が特定生産緑地の申請をしたのですね。

2016年の都市農業基本計画で都市農地は「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」へと位置づけが転換され、2017年の生産緑地法改正により、特定生産緑地制度の創設・指定面積の引き下げ・直売所や農家レストランの建築可能など制限が緩くなり、2018年の税制改正大綱・都市農地貸借法により、納税猶予を受けている生産緑地所有者にも終身営農以外に生産緑地を賃貸する道が開けました。

生産緑地法が改正されるまでは、2022年に不動産がたくさん供給され、不動産価格が下がるのではないか~なんて騒がれていましたが、国の偉い方々はそんなことお見通しで対策するわけですね。

不動産業界にいる人からすると当たり前に感じるかもしれませんが、人口減少・空き家増加の中、生産緑地解除により過剰に不動産が供給されてしまったら、大変なことになりかねませんからね。

さて、すでに約8割の生産緑地所有者が特定生産緑地の申請をしているとのことです。

2割の方は、方向性が決まり買い取り申請しているか、生産緑地のまま維持し宅地並み課税の激変緩和措置のある5年間に方向性を決めて対策を取られるということですね。

2割の方にはしっかりと専門家が付いておられるのだと想像できます。

私個人的な意見は、特定生産緑地の申請は問題の先送りと考えています。

なぜかというと、また10年間何もできずに営農を余儀なくされてしまうのです。

専門家が付いていれば特養や認可保育園などの提案もできますが、そんな専門家が付いていれば納税猶予を受けている所有者以外の所有者は特定生産緑地申請の選択は8割もしないと考えます。

ですから問題の先送りに近い判断なんだと想像してしまうわけなんです。

その問題とは、営農後継者がいない・相続税問題・専門家に意見を求めなかったばかりに有効に活用するアイデアが無かった。等々です。
宅地並み課税になるわけですから、収益を上げなければなりませんからね。そのアイデアが無ければ特定生産緑地を選択してしまうのかも知れませんね。

しかし先伸ばしにした所で、人口減少や空き家リスクは大きくなるだけです。

生産緑地に指定されるほど大きな土地を所有しているわけですから、相続対策は必須です。

相続対策がなぜ必要かというと、生産緑地の30年間は農地として営農以外の選択肢がなかったですが、そもそも生産緑地は都市農地であり市街化区域内にある広い土地です。

農地と考えるより不動産と考えて将来や有効使用を考えることができれば、いろいろな活用方法の提案を受けることができるはずです。
不動産のコンサルティングには必ず相続対策が入ります。そこに気づいていた所有者は2・3年前には専門家に相談していたでしょうし、直近で相談した方であっても生産緑地のまま激変緩和措置期間に対策する選択をしたように想像します。

もちろん相続税の納税猶予をすでに受けているのでしたら特定生産緑地の申請は仕方ありません。

ただ、現在納税猶予を受けていないにもかかわらず次の相続発生時に納税猶予を選択するため特定生産緑地を申請したのであれば、一度専門家に相談するべきです。

納税猶予は極力避けるべきです。

10年は長いです、10年後の状況なんて誰もわかりません。

私には人口減少・空き家増加を考えると10年後に不動産市況が良くなるという材料は今現在想像できません。

そんな中にあって、10年塩漬けにしてしまうことになる特定生産緑地を選択した所有者が8割もいるということには驚きました。

2022年問題なんて騒がれていましたが、我々専門家が受けた相談件数は微々たるものだったのですね。
仮に1992年の生産緑地指定当初に生産緑地の所有者が45歳だったとすると、2022年には75歳です。特定生産緑地を買い取り申請して解除できるころには85歳です。

所有者も高齢になっていることから、10年後の買い取り申し出可能な時を待つより、所有者の営農不能や相続が発生したことによる買い取り申し出が行われることが多くなるのではないかと予想します。

つまり今後は、相続手続きの中に特定生産緑地の買い取り申請や売却・コンサルティングが含まれてくることが多くなると考えています。

相続が発生すると、相続税の納税まで10か月です。

潤沢に納税資金があればよいですが、そうでない場合は慌ててしまい、期待した結果が得られなくなる場合があります。

そうならないためにも、所有者が10年を待たずして営農不能や亡くなられた場合に備えて、特定生産緑地については、後継者の方が専門家から特定生産緑地買い取り申請後の利用方法等のアドバイスを受けておいたほうが良いかもしれないということです。

社会情勢や不動産市況が変わりますので、遺言書を見直すのと同じように定期的に専門家のアドバイスを受けるとよいと思います。
また、特定生産緑地のままで利用する方法もアドバイスしていただけるかもしれませんので、所有者の方と一緒に専門家に相談するとよいと思います。
どちらの場合でも、所有者の方が高齢になられていることもあり、後継者の方が主導で準備することを考えてみてはいかがでしょうか。

せっかくの大切な都市農地を手放さなければならない状況だとしても、焦って判断した場合とあらかじめシミュレーションされている場合とでは、気持ちも成果も変わるはずです。

次回からは、生産緑地の活用方法や買い取り申し出後の活用方法を少しづつ紹介しましょう。

特定生産緑地の場合にも参考になるかもしれません。

生産緑地・特定生産緑地のご相談もお気軽に【相続手続きの相談窓口】まで。


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